大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

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観音渕の霊場(杵築市)

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観音渕の仏様

 観音渕の霊場を紹介します。こちらには千手観音様など、いろいろな仏様が安置されています。この霊場は大字中の八坂川べりにあります。大字中は「中村」と「出原」の2つの地域に大きく分かれて、この2地域の間はみかん山で隔たれ、山が八坂川のぎりぎりまで迫り、急傾斜で川に落ち込む地形です。山すそに軽自動車が通れる程度の細い道があり、その道ぎりぎりに川がせまり、ちょうど川が屈曲して淵になっているところを「観音渕」といいます。おそらく観音様が安置されていることからの名称であって、古くはほかの呼称があったと思われます。

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観音渕

 お参りに行くときは、自動車も通れますが道が狭くて危ないので、どこかに駐車して歩いて行った方がよいでしょう。中村から川べりの道を少し歩けば、道路脇(山側)にいくつかの石造物が目に入ります。

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観音渕の仏様

 左は、六地蔵様かと思いますが、壊れた石幢の上部を安置してあるのでしょうか?おそらく、昔はもう少し前面に立っていたのではないかと思います。または、近隣のどこか別の場所にあったものが、道路拡幅等にかかってここに移転・安置されたものかもしれません。中央は馬頭観音様。右は、何でしょう。どうも磨崖仏の断石のように見えます。どこかの崖に刻まれていた仏様が崩落したので、ここに移して安置したのかもしれません。2つの龕の高さが違っていることから、元あった場所には他にも仏様が刻まれていたのではないかとも思うのですが、現地に説明版等がないばかりか、杵築市誌等見ましても一つひとつの仏様には言及されていなかったため、詳細がわかりませんでした。

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観音渕

 こちらは傷みが進み細かいところがわからなくなっています。遠目には庚申様のように見えたのですが、お地蔵様でしょうか。

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観音渕の千手観音様

 観音渕の仏様の中でももっとも状態がよいのが、この千手観音様です。近隣の信仰を集めたばかりか、前の道路を通る人も盛んに手を合わせましたので、かつてはよく知られていました。お顔の表情、衣紋の表現など、たいへん緻密で丁寧な彫りではありませんか。まして、体の左右に手をたくさん並んだ手の指の緻密さはどうでしょう。この表現で「千手」をあらわしているところなど、おもしろく感じました。たいへん高級な技術をもった石工さんによるものと推察いたします。杵築市は、お世話が難しくなった地域の石造物をたくさん城山公園に集めています。この観音様については、城山公園に移されず元の場所に安置されてあって本当によかったと思います。

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観音渕

 ほかにも、たくさんの小さな仏様が安置されています。そのほとんどが傷みが進み、象容がわかりにくくなっておるのが残念です。でも、大昔から交通安全や川の安全を見守ってくださったたくさんの仏様が、今もこうして観音渕にいらっしゃるのは、ありがたいことではありませんか。

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