大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

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フルドモリの庚申塔(本匠村)

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 南海部地方も国東半島同様庚申塔の宝庫で、特に宇目・直川・本匠にはかなりの数が残っています。国東半島よりは文字塔の比重が増すのですが、その中で本匠村は、刻像塔が比較的多いのが特徴です。最近数か所を巡りまして、その個性的な塔の数々に感激いたしました。まず、宇津々の庚申塔群を紹介します。

 

  波寄から宇津々の谷を登っていきますと、道路の右側に庚申塔が寄せ集められたところがあります。私はその数に驚きました。なんと、40基弱の塔が1か所に集められていたのです!!!f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201109004415j:plain

 案内板には「フルドモリの庚申塔群」とあり、文化財の標柱には「宇津々の庚申塔」とあります。宇津々というのは大字です。フルドモリとはこの場所の小字で、山口部落の庚申塔をフルドモリに集めたのでこのように呼ばれているようです。この狭い地域に刻像塔が17基!庚申信仰が非常に流行していたのでしょうが、塔を建てるには元手がかかります。殊に刻像塔は、文字塔よりも費用がかかったでしょうから、ただの流行で片づけるには多すぎます。地域の方々の信仰心を想わずにはいられません。

 一つひとつ、像容が異なり、個性的な塔ばかりです。あまりにも数が多いのでいちいち説明はいたしませんので、写真をよく見ていただきたいと思います。

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 ものすごい密度です!あまり密集していて、一つひとつを正面から上手に撮影することができませんでした。殊に最後尾の列など、像容を確認するのも困難を極めます。文字塔かなと思ったら、横からそっと覗くと刻像塔でした。道路から一段高い区画を設けてたくさんの塔を安置しているわけですが、その区域が狭すぎて、後ろの塔がかわいそうな気がしました。できれば、2か所に分けるなどしてもう少し前後を開けていただければと思います。

 でも、考えてみれば庚申塔の各像は人を楽しませるために刻まれているわけではないのですから、これも外野の者もたわごとにすぎません。このように、集落の中の道路端に寄せられているおかげで、こうして容易に・安全にお参りができますし、塔の散逸を予防できているわけです。しかも、これだけの数になりますとおそらく人も通らなくなったような山道や、または耕作放棄地等に立っていた塔も多々あると思われます。そのような場所にて忘れられていく塔がたくさんある中で、このように里に集めてお祀りするのは意義深いことです。

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 有名な観光地ではありませんが、地域の文化財として非常に価値の大きいところですし、庚申塔その他の石造物に興味のある方にはたまらないと思います。ここまで自動車でも安全に通行できますので、本匠村を観光される際には、こちらにお参りをされるとよいでしょう。ここからさらに山に入っていくと、宇津々渓谷の滝が3つもあります。手前から二本松の滝、鼓石の滝、風神の滝と申しまして、深山幽谷の感を極める景勝地です。滝を見に行かれる際にも庚申様に手を合わせて道中の安全をお願いされてはいかがでしょうか?