大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

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藤原の名所めぐり その1(日出町)

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 藤原地区は、日出市街にほど近い地域から赤松峠をはさんで八坂川べりの地域まで、ずいぶん広うございます。地域内を貫通する国道10号の改良や自動車専用道路の開通、「ハーモニーランド」の開園、新興住宅地の造成等によりこの30年ほどで景観が一変しました。しかし大きい道路から少し入れば古い堂様やお寺、神社が点在し、その周辺には多種多様な石造文化財が寄せられています。先日、藤原地区の小さな堂様・神社を探訪する機会を得ました。その過程で見つけた庚申塔を中心に、藤原地区の名所めぐりの記事を書いてみようと思います。

 

1 和泉の水神社

 日出市街から国道10号を通って藤原地区に入ります。左に消防署を見て、その角を左折します。道なりに行けば右カーブになるところを直進すると、2車線になります。道路右側のゴミ捨て場のところを右折すれば、ほどなく小さな神社が見えてきます(冒頭の写真)。ゴミ捨て場の端ぎりぎりに寄せれば、軽自動車1台であればどうにか駐車できますが、邪魔になりそうです。どこかに車を停めて歩いて来た方がよいかもしれません。

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 この規模の神社にしてはその立地が非常に凝っています。四角の池の中に拝殿が立ち、道路から飛び石伝いにお参りをするようになっているのです。これは素晴らしい。水は透き通り、大きな鯉が何匹も泳いでいました。環境がよいし、近隣の方のお世話が手厚いのでしょう、清掃が行き届き、とても気持ちのよい空間です。うきうきしながら飛び石を渡ってお参りをしました。

 拝殿の中には石造物もございます。向かって左がお弘法様、右が庚申塔です。おそらく近隣の別の場所にあったものを、道路工事か何かで神社の中に移したのでしょう。仏様も庚申様も粗末にならず、幸いでございます。

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青面金剛4臂、2猿、邪鬼?

 折れた痕が痛々しいものの、きちんと修復されて立派にお祀りされています。シャカキもお供えされ、近隣の方のお参りが続いていることが分かり嬉しくなりました。残念ながら像容がぼんやりとしてきており細かい部分はよく分かりません。主尊の顎のラインや腕の曲線、達磨さんのように肥った体には何となくおめでたい雰囲気が感じられます。それに対して脚の細いことといったら、よくもあの細い脚で体を支えられるものです。主尊の足元は横向きの邪鬼のような気がしますが、もしかしたらただの台座かもしれません。猿は向かい合うて、まるでフォークダンスを踊るように両手をとり合うて立っています。楽しそうで、かわいらしいではありませんか。

 

2 井手の堂様

 和泉の水神社から国道10号に戻ります。藤原インター付近のセブンイレブンの角を入って道なりに行き、迫部落の十字路も直進して、空港道路を高架橋で跨ぎます。その先の十字路を直進すればほどなく道路際に枯鉾天満神社がございまして、その敷地内に庚申塔が立っています。この辺りは藤原地区と大神地区の境界で、枯鉾天満神社は大神地区になりますので別の記事で紹介します。下記リンクを参照してください。

oitameisho.hatenablog.com

 枯鉾天満様にお参りをしたら十字路まで戻って、井手八幡方面に上ります。道路が右カーブするところの左側に、目的の堂様がございます。駐車場所がないので、井手八幡に駐車させていただき歩いて来るとよいでしょう。

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 境内には六地蔵様、お弘法様の立派な祠や、庚申塔が一列に並んでいます。このように立派にお祀りされておりますので粗末になることもなく、いつも井手部落を守ってくださっています。

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青面金剛4臂、2童子、2猿、邪鬼?

 すらりと背の高い塔で、大きな宝珠がよう目立ちます。碑面を見て、和泉の水神社の庚申塔によう似ていることにすぐ気付きました。以前、下川久保の庚申塔を紹介した際にも申しましたが、藤原地区の庚申塔は似通ったデザインのものが多いようです。

 さて、こちらの主尊はにこにこと優しそうな笑顔でございます。体前高くに手を回す立ち姿はまるで声楽を歌う方のようです。衣紋も、まるでフリルをたっぷりととったフープスカートのように見えてまいりまして、もちろん実際はそんなはずがないのですけれども、いろいろと空想が広がって楽しいではありませんか。童子のささやかな表現がかわいらしいし、猿は仲よう向かい合うて、組み踊りを踊っているかのような朗らかさでございます。全体的に明るく楽しい雰囲気の感じられる、親しみやすい庚申様で、境内で遊ぶ子供を優しく見守ってくれそうです。なお主尊の足元は邪鬼の顔のような気がしますが、定かではありません。

 

3 迫の堂様

 井手の堂様から迫の十字路まで戻って右折します。上り坂を少し行けば、ほどなく道路右側の小高い境内に庚申塔が立っているのですぐわかります。車はそのすぐ下の背戸を右に入れば、境内に上がって1台は駐車できます。またはこのすぐ近くに路肩の広くなっているところがありますから、その端に邪魔にならないように停めてもよいでしょう。

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青面金剛4臂、2童子、2鶏、2猿

 この塔は大きな日月が目立ちます。特に月を、三日月で表現しているのがなんとも微笑ましくてよいと思います。主尊は下川久保や上川久保の庚申塔(以前紹介しました)にそっくりで、さても珍妙なる雰囲気が漂うております。非常にボリューム感のある御髪を逆立てて風になびかせ、まん丸のお顔の中央に眼・鼻・口を寄せて、いたずら小僧のような表情で自信満々に立っています。また、上の腕と下の腕の付け根が離れて、さらにその下にはスカート状に衣紋が急に広がっておりまして、これらが昆虫のような造形にて珍妙さに拍車をかけています。

 童子は主尊の両脇ではなくて、一段下に別の区画を設けて2人並んで立っており、顔を見合わせています。主尊を見守る近所のおばさんのような風情がございます。その下の区画では猿と鶏がそれぞれ向き合うて、仲良う遊んでいるようです。家内円満や夫婦和合を象徴するような表現で、めいめいの像がただ左右対称になっているのではなくて微妙に上下に動きをつけているので、いきいきとしていてとてもよいと思います。ただでさえ背の高い塔なのに基礎を2段にしていて、しかも立地が道路より高いものですからほんに堂々とした印象を受ける庚申様でございます。

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 堂様の奥に葉、お弘法様の祠が並んでいます。この場所でお接待を出すのかもしれません。境内は清掃が行き届いています。

 

4 安養寺の天満宮

 迫の庚申様から道なりに上っていくと、左側に安養寺グランドの駐車場があります。車を停めたら、すぐ上の段の墓地への坂道を上がりますと正面に石祠がございます。拝殿も何もありませんが、こちらは天神様です。

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 石灯籠には「天満宮」と彫られています。近隣の方の手入れが行き届き、お供えもあがっていました。灯籠の後ろにある石塔は庚申塔です。

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猿田彦大神

 藤原地区では、猿田彦庚申塔はほとんど見かけたことがありません。捜せばもっとあると思いますが、数はあまり多くなさそうです。

 

今回は以上です。いずれも簡単にお参りできる場所です。散歩がてら立ち寄るのもよいでしょう。次回も藤原地区の小さな堂様や神社、その周辺の石造物を紹介します。