大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

カテゴリから「索引」ページを開いてください。地域別にまとめています。

三郷の名所めぐり その2(山国町)

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025613j:plain

 耶馬六十六景の中でも秘境中の秘境、山国町は天岩戸の景を紹介いたします。参道が非常に険しく、一般の観光客の方は滅多に足を踏み入れない場所です。行き方が難しいので、道順や注意点を詳しく説明したいと思います。

 

3 天岩戸の景

 まず、国道212号を通り道の駅山国を目指します。中津方面から向かいますと、道の駅の手前に橋がかかっています。その橋の手前から右折しまして、県道646号(以下県道と表記します)を「中摩殿畑山」方面に登っていきます。道中には雪舟庭、羽高棚田、京岩・鷲岩等の名所旧跡が目白押しです。羽高の集落にて、道がY字になっていますのでこれを左上に上がります。道が狭くなりますが普通車でも問題なく通れます。進んでいくと道路右側に下の写真の案内板があります。その近く、右側に駐車場があります。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025709j:plain

 徒歩約20分とありますが難所の道が続きますし、たどり着けば絶対にゆっくり景色を楽しみたくなる場所ですので、見学時間等も含めて往復1時間半は見ておいた方がよいでしょう。案内板には「(仙人梁にて)肝をひやされます」とありますが、それまでの道中の方がよほど肝を冷やしますので、必ず歩きやすい靴・服装で、一人では行かずに複数名で行きましょう(小さい子はやめておいた方がよい)。

 

(1)天岩戸

 さて、車をとめたら、道路の反対側から川の方に進みまして、砂防ダムのところを対岸に渡渉します。橋はないので気を付けて渉ってください。擬木階段を登り、さらにコンクリート舗装の急坂を登ります。すると、下の写真の場所に出ます。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025733j:plain

 荒れた沢です。遊歩道などありません。この沢を登っていきます。普段は水量が少ないので気を付けて登れば足を濡らすことはないと思いますが、浮石がたくさんありますので捻挫に注意してください。それと、必ず前後の間隔を少しあけて登りませんと、落石に巻き込む・巻き込まれる可能性があります。この写真だけ見ると容易そうに見えるかもしれませんが、途中で大きな段差をよじ登る箇所があります。手を使わないと無理な高さで、水が落ちています。足を滑らせると大怪我をしますのでよく気を付けて、無理だと思ったら諦めて引き返してください。

 その段差を越えて少し登ってから、沢から離れて右に上がります(目印があるのでわかります)。一段上がると、道が左右に分かれています。右に行けば「天岩戸」です。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025801j:plain

 これが天岩戸です。駐車場付近の案内板によれば、かなりの奥行きがあるようです。でも中は真っ暗で、懐中電灯がなければ様子がわかりません。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025816j:plain

 懐中電灯を持っていませんでしたので、フラッシュ撮影して中の様子を確認しました。神様の石かと思われます。無事ここまで上がってこられたことにほっとして、手を合わせました。危ないので奥には行きませんでした。

 

(2)西京橋

 少し戻って、先ほどの分かれ道を左上に上がっていきますと、すぐ「西京橋(仙人梁)」の下をくぐることになります。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025828j:plain

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025845j:plain

 なんとまあ素晴らしい景色でしょうか。下の写真は豊前坊の洞窟から振り返って撮影したものです。本当に、天然の岩の橋がかかっています。その規模たるやものすごく、この橋がガラガラと崩れてきてはひとたまりもありません。おそらく、この橋と洞窟の天井は大昔、それこそ千年以上前かもしれませんけれど、かつては一続きになっていたのではないか?と考えました。何らかの原因で下の土の部分が流れ去って空洞になってしまい、中間の箇所が落ち込んだようになったのではないでしょうか。非常に迫力に富んだ、ものすごい光景です。

 この場所に立ったとき、あの難所の道を上がってきた甲斐があった、やっとこの目で見られたと感慨無量であったのと、景色のものすごさに呆然とするやら畏怖の念を抱くやらで、しばらく見惚れてしまいました。自然林と天然の岩橋・大洞穴の組み合わせは、どんな大きな絵にも描き余る規模・迫力・美しさで、人間のちっぽけさを想わずにはいられません。とても写真には収まらないのです。ここまで登るのは大変ですが、ぜひ、みなさんに見ていただきたい景色です。

 

(3)豊前

 西京橋をくぐった先が豊前坊の洞窟の入口です。その開口部たるやものすごい大きさで、洞窟の体をなしておりません。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025856j:plain

 段差がありますので、写真のように鎖や簡単なステップを整備してくださっています。ありがたく利用させていただきましたが、この辺りは土が湿っておるのとステップが傷み気味であったために、やや難渋しました。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025900j:plain

 豊前坊の祠です。山国町は、英彦山との関係が深い土地であるそうです。こちらの祠も、おそらく修験道の関係で、山伏の方によりお祀りされたものではないかと思います。今は名所旧跡を訪ねる方や登山の好きな方が訪れるばかりになっているこの場所も、かつては修業の場であったのかもしれません。わたくしのような者が物見遊山で訪れていることがおこがましいように感じましたが、ありがたくお参りをさせていただきました。

 それにしてもこの洞窟の広さ、特に天井の高さは特筆もので、野津町の白山大権現の洞窟に匹敵するほどだと感じました。スマホのフラッシュでは、全体像を捉えることはできませんでした。

f:id:tears_of_ruby_grapefruit:20201123025927j:plain

 豊前坊にお参りをしたら、来た道を駐車場まで戻ります。こういった岩場は、登りより下りの方がずっと神経をつかうものです。殊に、先ほどの沢を下る際、行きにてよじ登った高い段差を下る場面では足元の様子がわかりませんで、非常に恐ろしく感じました。車にたどり着いたとき、無事に戻れてよかったと安堵しましたとともに、天岩戸や豊前坊はもとより、この大自然における山の神様、木の神様、石の神様などのお陰様だ、同行者がいたからだと、いろいろと考えましてとにかく感謝の念を抱いた次第でございます。

 この場所は、みなさんに見ていただきたい景色ではありますけれども、今後も遊歩道等は整備されないままの方がよいでしょう。ただ、沢の大きな段差の箇所だけ、鎖があった方がよいとは思いますが、あの様子では鎖を固定する箇所に難渋するかと思われます。

 山国町というところには、猿飛千壺峡やマベシ谷等の有名な景勝地以外にも、興味深い名所旧跡がたくさんあります。季節のよいときに、また探訪したいと考えています。