大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

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落水の霊場(大野町)

 

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 大野町は大字大原字住吉に、落水(おつるみず)磨崖仏があります(※)。落水磨崖仏の近くには庚申塔などの石造物も残っており、霊場の様相を呈しています。それで、磨崖仏に限定した内容ではないので、項目名は「落水の霊場」としました。
※ 落水と落ル水、どちらの用字も通用していますが、ここでは現地の案内板に従い落水磨崖仏の表記で統一します。

 

  朝地町から県道57号を大野町方面に進み、右側に友岡組の建物のある十字路を右折します(十字路の右奥に落水磨崖仏の標識あり)。小さな橋を渡って1つ目の角を左折します。道なりに行くと、道路左側に鳥居と案内板が見えてきます。邪魔にならないように、鳥居の近くに駐車してください。

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 立派な鳥居ですが貫が破損して下に落ちてしまっています。この状態ではもし地震が起きたりしたときに倒壊しやすいのではないかと気がかりです。鳥居のところから参道を下っていきます。

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 参道を下ると、一段高いところに庚申塔や石燈籠などいろいろな石造物が寄せられています。足場がよくありませんが、上がれるように段々になっているところがあります。

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青面金剛6臂、ショケラ

 非常に風変りな庚申様です。短い手足や、ものすごく小さなショケラとの対比で胴の長さが際立っています。衣紋の赤い彩色がよく残っていますが、これは待ち上げなどで着色しなおしたものでありましょう。形式化の極みといった感がある衣紋はまるで西洋の鎧のような雰囲気がございますほか、全体的にこけしのような造形にて、なんともいえない珍妙さが感じられましょう。猿も鶏も伴わぬ、主尊だけのシンプルな塔でありますのに、奇抜な造形が印象深うございます。塔の上部の傷みが進み、お顔が全くわからなくなっていますし、上の手も消えかかっているのが残念です。

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 庚申塔のすぐ隣にある仏龕です。左は馬頭観音様と思われます。右は何の仏様でしょうか。このように2種類の仏様が1つの仏龕の中に並んでいるもので多いのは、お弘法様とほかの仏様が対になっているもので、これは新四国の札所でときどき見かけます。でも、こちらはどう見てもお弘法様ではなく、詳細が分かりませんでした。

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 石造物の左側の崖に磨崖仏(不動明王)と南無阿弥陀仏の名号が彫ってあります。お不動さんは、こちらは彫りが浅めで、しかもシダ類の侵蝕もありまして、年々像容が不鮮明になりつつあるようです。赤く着色した目がやや異様な感じはしますが、不動明王というわりにはあまり怖そうな様子ではなく、失礼ながらかわいらしい雰囲気すら感じられます。それは、元々の造形というよりも風化によるところが大きいのでしょう。

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 磨崖仏の下には湧水があります。きれいな水ですが、生水を飲むのは気が引けて飲用は控えました。こちらの湧水を含めて、あちこちにお弘法様の水や山の神様の水などのありがたい湧水がございまして、それらは水質を疑うさえ畏れ多いものでございます。でも、その全ての水質が保障されているわけではございませんので、よく気を付けるに越したことはありません。

 写真はありませんが、磨崖仏のところから少し下れば下に小さな神社が鎮座していますのであわせて参拝されるとよいでしょう。そこから崖に沿うて緩やかな坂道を登れば、上の道路に出られます。