大分県の名所・旧跡・史跡のブログ

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東山香の名所めぐり その1(山香町)

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 東山香地区の名所旧跡を巡ります。この地域は探訪したのが15年ほども前でございまして、まともな写真があまりありません。ですから、ひとまず甲尾山と鋸山のみ簡単に紹介しまして、残りは次回以降に回します。

 

1 甲尾山

 甲尾山(こうのさん)は神塩(こうじょ)温泉のすぐそば、国道沿いの山です。甲尾を「こうの」と申しますのは、元は「甲ノ尾」の意で「こうのお」であったものが、詰まって「こうの」となったのでしょう。この「甲」は龍を指すそうです。低い山ですが見晴らしがようございまして、公園化された山頂は吉野桜の名所であります(冒頭の写真)。山頂の風車は山香町を象徴するランドマークとして親しまれています。なお、かつては山頂広場に立派な複合遊具があり子供の喜ぶ公園でしたが、老朽化で撤去されてしまったのは残念なことです。

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 こちらは国道から長い階段を歩いて登ることもできますが、大変です。車道がありますので自動車で上がれば簡単に風車のところに到着できます。

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 山頂公園の一角に立派なお弘法様が立っています。台座の「国家安全」の文字から推して、そう古いものではなさそうです。山香は国東半島の付け根に位置します。ですから国東半島の村々同様にお弘法様の信仰が盛んで、春のお彼岸のお中日にはお接待の赤い幟が方々で見られます。国東半島では一般に旧の3月21日にお接待を出しますが、山香のお接待は新暦に移行しています。ですから必ず学校が休みなので、小学生にとっては都合がよいようです。

 

2 鋸山(田原山)

 甲尾山のところから大田村に抜ける農免道路を道なりに行き、妙善坊部落辺りまで来ますと眼前に荒々しい山脈が迫ってまいります。この山が有名な鋸山(田原山)で、岩尾根を辿って周回するコースには登山者が絶えません。今は鋸山トンネルの手前に立派な駐車場が整備され便利になりました(この農免道路が開通するまでは妙善坊部落あるいは東妙善坊部落から登っていました)。

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 鋸山に登るなら、やはり秋がよいでしょう。荒々しい屏風岩や岩峰と紅葉の取り合わせが何とも言えません。晴天の日は言わずもがな、曇り空の日もなかなかよいものです。この写真以外にも素晴らしい景色が次から次に現れます。ところが登ったのがもうずっと前で、ろくな写真がありませんでした。諸般の事情により近いうちに再び登山することはできそうもありませんので、写真1枚のみになりますが記事を書くことにいたしました。

 駐車場に車を置いたら、道路を横切って立派に整備された登山道を登って行きます。左に道が分かれますがこれは下山時のルートですから無視して、とにかくまっすぐ「大観峰」まで登ります。急傾斜に息が上がりますが、登り詰めたら息をのむ絶景が広がります。ここから狭い尾根道で、道も乏しき岩根を攀じる場面が度々ございます。でも整備が行き届いており足場手掛かりに不足はございませんので、気を付けて通れば問題ないレベルです(雨降りや風の強いときはやめておきましょう)。途中で熊野磨崖仏の方に下る道もあります。もし複数名で2台の車で行けるときには予め熊野磨崖仏側に車を1台置いておき、熊野に下ってもよいでしょう。そうでないときはこの道も無視して、道なりに下りますと登山道の途中に合流することができます。

 この登山道の半ばに、囲観音堂がございます。昔、雨がなかなか降らないときは旱害を懼れて、観音堂の狭い坪に輪を立てまして、雨乞いの盆踊りをしたそうです。そのときは「二つ拍子」を踊ったとのことで、これは推測ですけれども、ただでさえ日照り続きで往生しているので「ヤッテンサン」や「レソ」等の速い踊りは踊らず、のろまで簡単な「二つ拍子」を踊ったのでありましょう。

  〽雨よ降れ降れ早う降りなされ

   アラセ ヨイヨイ

   イヤドッコイサで早う降りなされ

   アラヨーヤサッサノドッコイショ

 なお、今は大田村に行くのに農免道路を車で通りますが、古い峠道に「逓送越」という道があります。この道は東妙善坊あたりから鋸山の裾を越す徒歩道で、昔、郵便配達員が山香・田原の連絡・郵便物のやり取りに盛んに通ったことから、このように呼ぶそうです。その道の痕跡を捜してみようと思い立ち挑戦したこともありますが、とうに廃道になっていますし、農免道路の工事等で地形が改変されたこともあるのか、私には難しいと悟りましてすぐ諦めました。

 もし鋸山に登られるときは、雨乞いの盆踊りや逓送越など、昔の歴史にも思いを馳せていただきますとより充実した登山になるのではと思いまして、この場で補足説明いたしました。

 

今回は以上です。倉成磨崖仏や小武寺、金墓横穴墓などいろいろな名所旧跡を、近日中に再訪したいと思っています。ある程度写真がたまったら続きを書きます。